健康へのヒント

血圧・・高血圧病とはなにか?(1) 概要



血圧と高血圧症(2) 図で理解する血圧
血圧と高血圧症(3) 年齢と血圧
血圧と高血圧症(4) 基準値とはなにか?
血圧と高血圧症(5) 病気ではない血圧
血圧と高血圧症(6) 血圧の変動
血圧と高血圧症(7) 測定する方法
血圧と高血圧症(8) 血圧の危険と年齢の危険
血圧と高血圧症(9)  高血圧治療と弊害
血圧と高血圧症(10)食塩と血圧
血圧と高血圧症(11)塩分と血圧(修正版)
血圧と高血圧症(12)塩分が影響するのは10人に2人だけ??
血圧から見た健康

(出典:武田邦彦(中部大学)ブログ



「免疫力が あがる方法」~からだと健康のお話し集~





教義の目的について、熱く語る ありし日の中村天風




ケリー・マクゴニガル 「ストレスを友達にする方法」





明るく楽しく単純明快『病気の治し方』【斎藤一人】





薬はなくてもがんは消える! 〜食事と習慣で治すがん〜 【CGS 宗像久男 健康と予防医学 第47回】





「ヘルシー」と「病院」が病気を作る時代(1)
 縦割り医療


国民の健康を考えたときの日頃の生活に注意すること」と「家族の健康を考えたときに日頃どうすればよいのか」は大きく違う。今の厚労省や医師会の医療は「個人が病気になってもかまわないが、国民全体の病気が減れば良い」という方針だ。

たとえば、その典型的なものが「血圧」だ。どこから見ても健康という人を150万人のうちから1万5000人選んで、その人たちの「平均血圧」というのを計算したら147、つまり150ぐらいだった。

だから「血圧は150以下が良い」というのは医学的に、医療の面でも、また科学的にも間違っている。まず、血圧は高い方が良いか、低い方が良いかというと、

1) 高いと血管系の病気になり、脳出血などの原因になる

2) 低いと血の巡りが悪くなり、ガン、腎臓病、認知症、熱中症の原因になる

ということで、どちらもどちらだ。

また、「平均が150と、上限が150」というのとは全く違う。医学統計では「まったく健康な人の平均の血圧が150だった」ということ、そのことしか言っていない。確かに「健康な人」の「平均」の血圧は150だが、「平均」というのは単に「真ん中」というだけで、180で健康な人、120で健康な人が現実にいるのだから、180の人が「平均より高い」という理由で「その人にとって正常な血圧」なのに150まで下げる必要はない。

また、血圧が120の人は「低くて良い状態」というわけでもない。180で健康な人と120で健康な人は同じだ。

しかし、これが「家族や本人の健康」ではなく、「国民の高血圧の病気を減らす」ということになると、まったく考え方が違う。血圧は体の血の巡りを保つために、末梢神経や腎臓で適切な血流量を決め、その血流量を維持するために血圧を決める。

たとえば腎臓の血流量が不足すると腎臓から心臓へ「もっと血を送れ」という信号が行き、心臓は筋肉を収縮させて血圧を上げ、血を送る。

しかし、血圧を高くすると、それは「体全体としては望ましい・・・ガン、腎臓病、認知症、熱中症が減る・・・けれど血管が破裂する危険性は増える」ということになる。そうすると厚労省や高血圧学会が「血圧と血管系疾病」という統計を取ると、「血圧が低いほど安全である」という結論が得られる。

そこで「血圧は低ければ低いほどよい」という奇妙な結論に到達して、それをここ20年も続け、「減塩食はヘルシーだ」という奇妙な考え方まで出てきた。上の血圧を50ぐらいまで下げるとすぐ死んでしまうが、血管系の病気には絶対にならない。だから、厚労省、高血圧学会、降圧剤メーカーはそれで良い。

個人の健康や生命などしったことはない。縦割り行政、縦割り医療だからだ。とんでもないことで、このブログでは、1)しっかりした事実に基づき、2)国民全体ではなく個別の家族や個人の健康、を中心にして「どうしたら病気にならないか」について整理し、考えていきたいと思う。

もちろん、今、心配されている福島を中心とした被曝と健康についても冷静に考えていきたい。

(平成27年8月16日)

(出典:武田邦彦(中部大学)ブログ


「ヘルシー」と「病院」が病気を作る時代(2) 「減塩食」の危険性
「家族の健康」のために(3) 腎臓がちょっと悪いと透析になる



コレステロール・ショック(1)
 間違いのもとはどこにあったか?



動脈硬化学会と厚労省が「コレステロールと食事は関係がない」と発表したのは、日本国民の健康にものすごい影響のある、巨大な事件です。国民の多く、特に年配者では「コレステロールは注意しなければならない。油っぽいものを食べてはいけない」と思っている人も多いし、「脂肪の少ない料理」が「ヘルシー」と呼ばれています。

エッ!一体、なに?? 本当?!とビックリするようなことですが、テレビも新聞もさっぱり報道したり、特集番組をする気配はありません。これまで50年間にわたり、ウソをついてきたのですから、自分たちの体面を考えて、金縛りにあっています。

でも健康は国民のものですから、マスコミはいっこくも早く報道して、これまでのことを訂正しなければならないのですが、さすがにこれほどのウソが長く続いたものは訂正が難しいでしょうから、このブログで少し詳しく解説します。

もともと「コレステロールは危険だ」という話自体があやふやだったのです。その理由は、

1) 戦争前の医療では医師は病気に対して「故障を直す」といういわば修理工だった。

2) 健康に悪いものを病気になる前に注意するという「健康医療」はほとんど知られていなかった。その前段階の「予防医学」が少しあったぐらい。

3) 最初のデータは誰が見ても杜撰なウサギのデータと、極端にコレステロールが多い北ヨーロッパの患者のデータだった。

4) もともと日本食には「油」というのはそれほど多くなく、特に庶民のおかずは「焼き魚、煮物、おひたし、味噌汁」の時代だった。

ところが「肉や卵からコレステロール」という「耳慣れないが覚えやすい」言葉が受けて、「俺はコレステロールというものを知っているんだぞ。偉いだろう」ということで一種のはやりになったのです。

それは1950年代の終わり頃で、朝鮮戦争が終わり、平均寿命は男65,女70で、今より15年ほど若くして死んでいた時代ですから、雰囲気もかなり違い、また、そろそろ多くの人が健康というものにも注意を払い出した時期にも重なっていたのです。

つまり、戦争が終わって命や健康に興味がわき、食事が欧米化していくなかで、「肉や卵は危険だ、注意する必要がある」と言うことになったのですから、飛びつくのも無理はなかったのです。私も今、当時の我が家に「コレステロール」という会話が入ってきた時を想い出すことすらできます。

もちろん、医師や栄養専門家の方にも問題がありました。それまで病気の治療というのが主務で、病気を未然に防ぐなどという研究も初歩、経験も無かった時代ですから、少しは謙虚でなければならなかったのですが、傲慢で断定的でした。

でも、最初の失敗は良いとして、今から30年ほど前、1980年代になるとコレステロールが危険だというのはおかしいという研究が出始めていました。でも、それをつぶしたのも、医師であり、マスコミでした。それまであまりに一方方向の報道だけが行われていたので、「食品と体内コレステロールは違う」というような意見は「変人」と見なされて、テレビにはでず、「皆と違う」ということで無視されたのです。

(平成27年5月21日)

(出典:武田邦彦(中部大学)ブログ




健康を知る001 お金にまみれた健康



自由な社会と資本主義は、アダムスミスが言った「神の手」が働いて自動的にうまくいくと今でもほぼそのように考えられているけれど、貧富の差が開いたり、まじめに働いていても金融危機など全く関係ないことで解雇されたりする社会でもある。

そう、お金は人生にとって大したことは無いとは言っても、やはりお金はお金である。でも、やはり人生にとってもっと大切なものの一つは「健康」だろう。その健康までもお金に翻弄されている。

一番、危惧されているのは、たとえば高血圧で、血圧の「基準」というのを10下げると降圧剤が4000億円ほど余計に売れると言われている。だから少しずつ血圧の基準が下がってきた。

私の若い時代は、正常血圧=年齢+90 だった。だから70歳の人は160が「正常血圧」になる。ところが、いつの間にか(高血圧の研究が進んでというのが正しい)年齢とは関係なくなり、150,140,130と減ってきて、2014年に血圧騒動が起こったときには「至適血圧」は120まで下がっていた。

血圧の問題は別の機会に整理をするけれど、お年を召した方で血管がやや硬化している場合、120まで下げると「毎日、ぼーっとしていて、ただ生きているだけ」という状態になる場合もある。

だからといって犯罪としては取り締まられることはない。もともと刑法はそんな複雑な仕組みを想定していないし、警察は乱暴な犯罪に追われているから、そんなこと医師の方でやってくれということになる。

時々、「降圧剤の効用についての論文に作為があった」というような事件が大々的に報じられる。もちろん「降圧剤を使ったら、こんなに効果があった」という論文が続くと、その薬の販売量は増えるだろうから、いかがわしい研究者が製薬会社からお金をもらって書くことも、人間だからあるだろう。

でも、それも氷山の一角であり、今の貧弱な刑法では太刀打ちはできない。

血圧ほどはっきりしていなくても、次回に整理する「植物油」問題がある。なかなか巧みで、まず肉食が主体の欧米の病気の例を大々的に報道し、それに数ある動物実験のなかで都合の良いものを取り出して、これもマスコミに宣伝させる。

それが第一段階で、日本人にはあり得ないような高いコレステロールの患者さんを示して、「コレステロールは悪だ」という宣伝を繰り返す。それが10年も続くと、日本人の多くが「コレステロールは悪だ。動物性脂肪をとらない方が良い」ということになり、さらにテレビが「さらさらサラダ」などという番組をやり、日本だけで販売されている「サラダ油」というものが売れる。

ところが、植物油だから健康に良いなどというほど単純ではない。もともと毒性が強く食用に向かない菜種油のようなものがあるのは昔から知られている。ただ、食物の歴史をみんなが知っているわけでもないので、主婦はテレビで言っているとおりを信じて、植物油信仰が固定する。

これも犯罪になりにくい。悪い植物油を食べても、せいぜい不妊、性欲減退、神経症などになるが、急性の病気で死ぬわけでもないし、ある人に子供ができなくても、それをその人がそれまでに食べた食材との因果関係を証明するのは不可能である。

そこで、このシリーズでは「刑法でも、社会的にも糾弾されることはないけれど、食材や食品加工などで危険なものを、「純学問的」に整理」して少しでも毎日の食生活が安全になるように考えていきたいと思う。

「これを食べれば」というものではなく、「こう考えるとより安全になる」と言うことなので、ややまどろっこしいと思うけれど、現代のお金本位の社会で、安全な食生活を送ろうとすればどうしても知らなければならないことを示したいと思う。

(平成27年4月3日)

(出典:武田邦彦(中部大学)ブログ




健康を知る002 植物油の安全性-1



危険な植物油が横行するようになったのは、コレステロールが体に悪いという医学と生理学などから見ると、完全に誤った宣伝を長い間、日本国民が受けたからだ。でも、その話は次回以後にして、まずはどんな植物油が体に悪い可能性があるかを整理したいと思う。

まずその前に私たちの先入観を取り去らなければならない。それは「サラダ油」というのは日本だけのもので、サラダを食べる白人の世界からきたものではないということだ。これだけで「エッ!」と驚く女性が多い。

白人が「サラダ」というのは、野菜にお酢と塩、それに油を「自分であえて」作ったものを掛けて食べるものを言う。もともと英語ではサダド、フランスでサラードとか聞いたことがあるが、いずれにしても、サラダはソルト(sal,塩)が語源だから、「野菜に塩を掛ける」という感じだ。

ヨーロッパでもサラダと言わないわけでもないような気がするが、サラダ油というのは日本の独自のものだということで、私たちの錯覚が分かると思う。

もともとヨーロッパの食というのは日本より手作り感がある。なにか食べようとすると、これは裏の庭でとれた・・・とか、この油はどうのこうのとなにか地場の説明が入る。そしていやに香辛料がきいていたり、ドロッとしていたり様々だ。

それに比べて日本のドレッシングというと、「フレンチ」、「中華風」とかほぼ同じものが大量生産で出てくる。その典型が日本独自の「サラダ油」だ。うまい名前をつけたものだ。日本人が錯覚することを計算して(悪意はない。それは間違いない)名付けた。

もともと、日本には生野菜を食べる習慣はない。日本古来の野菜というと、お米、ゴボウのようなもので、火を通して食べる。外来種としてはやや古いけれど、17世紀、つまり江戸時代に入って来たほうれん草も、ゆでて食べたり、味噌汁に入れたりする。

「生野菜は日本人の健康に悪い」という説はかなり強力だが、私はまだ確定していない。データが不足している。でも、「日本人は生野菜を食べる必要は無い」というのはほぼそうではないかと思う。なにしろ日本では50年ほど前まで生野菜というのを食べたことがない。

それは農薬と化学肥料が登場してから、やっと食べられるようになったからだ。おまけにその生野菜に植物油を掛けると言うことになると、さらに疑問が膨らむ。もともと生野菜はそれほど美味しくないので、美味しいもと(味の素のようなもの。味の素は健康に良いが)としての油をかけるという感じだ。

ここまで整理してくると、いつもこの手の専門家が言う「女はだましやすい」とか「女はバカだから」というのを思い出す。私はそうは思っていないが、確かにそういう側面がある。レストランに行くとまずはサラダを食べようとしている女性を見ると、「本当に美味しいからかな?」とか「錯覚で美味しいと思っているのかな?」と思う。というのは人間は小さな頃に食べたものしか美味しいと思わないので、よほどの錯覚が無い限り生野菜を食べないはずだからだ。

それはともかく、自分の家で作るとサラダ油はできない。サラダ油というのは「大量に工場で作られること」がその要件だからだ。そこでメーカーは(悪気はなく)安くて衛生的な油を使う。そこでもともと食べることができなかった菜種油を加工してサラダ油にする。それがキャノーラ油である。

キャノーラ油を開発したカナダの技術者は、それから数10年を経て、日本の油脂学会が「キャノーラ油をラットに与えると寿命が縮む。家畜の子供数が減る。脳にも影響がある」という論文を出すとは思ってもいなかっただろう。

いったん、そうなると「菜種油」というのはもともと毒性が強いとか、毒性成分が何とかが明らかになる。私が油脂学会の論文や書籍を見ると、娘には「キャノーラ油は使わない方が良いだろうね。大豆か紅花を使ったら」と言うだろう。いろいろなデータを見ると結果は様々だ。でも、おそらく「大豆油か紅花油を動物の脂より少なく使えばOK」という感じだ。

(平成27年4月3日)

(出典:武田邦彦(中部大学)ブログ




健康を知る003 植物油二回目



表紙には日本脂質栄養学会の奥山先生のご本に掲載されているグラフを示しました。棒グラフになっていて、油脂や肉類などを例にとって、食べ過ぎると良くないものと、良いものに分類しています。

食材の危険性などは人体実験ができないので、動物実験とこれまでの歴史的な経験の組み合わせなどで判断しなければならないので、具体的なデータ(人間のものはほとんどない)より、経験を積んだ医師、栄養関係や毒物系の研究者の総合的な判断の方が役立つ時が多いものです。

そのような考え方から、植物油の危険性を学ぶ上で、このグラフを選びました。整理をされたのは日本ではもっとも信頼性があると思われる先生のグラフを参考にします。

3つの群に分かれています。

1) 食べる量と危険性があまり関係ないもの・・・植物性タンパク質(大豆など)と総脂肪(種類を問わず、油の合計)

2) 食べる量が増えると危険なもの・・・植物油(サラダ油など)

3) 食べる量が増えると良くなるもの・・・動物性タンパク質、動物性脂肪

4) 増えたほうが良いもの・・・コレステロール

どれをとっても「エッ!本当??」と聞き返したいことばかりです。私たちの常識・・・動物性の油や肉より植物性の方がヘルシーだとか、コレステロールは少ない方がよい・・・とまったく逆なのです。

でも、「私たちの常識」が「正しい」とは限りません。むしろ、私たちは医学論文を読み、自分でよく考え、そして作り上げた常識ではなく、単にテレビで繰り返し言われているからとか、コマーシャルでよく聞くからという程度のものが多いのです。つまり「常識とは違う」というのは「付和雷同」と同じこともあるのです。

コレステロールについては次回にやりたいと思いますが、コレステロールを減らす必要があるというのは、「肉食のヨーロッパの人で極端にコレステロールの高い人(300ぐらい)の症例」を「肉食に少ない日本人のコレステロールの低い人(200ぐらい)」にそのまま適応したから間違いが起こりました。

途中でコレステロールは必須のものであることが分かり、慌てて「善玉」、「悪玉」という区別をNHKが作り、さらに混乱しました。コレステロールの問題も、植物油(動物の脂をふんだんにとる人にとっての植物油と、もともと油の料理の少ない日本人の場合は違う)の問題も、「普通の生活でとっている量」、「民族や料理の特徴」、「体質」などによって違うので、ヨーロッパやアメリカの研究、それも自分の会社の薬が売れるからとか、医療の分野で功績を挙げたいからということで奇妙な説を唱え、マスコミが「注目を浴びるから」と放送しているうちに「常識」になったものが多いともいえます。

ここではまず、現在の日本の生活では、動物性のタンパク質(肉)や油はまだとっても良いけれど、植物性の油は少量にとどめておいた方が良いということをまずは理解することが大切と思います。もちろん、だからといって毎日、肉や脂身を食べて良いというのではなく、基本は「伝統的な日本料理」を基準にしてやや洋風にという感じです。

日本料理というのは、魚(動物性タンパクと油)と煮物の野菜、漬け物を中心としてきました。油のものはほとんど無かったのは、高価なごま油しかなかったこともありますが、日本料理で唯一、油を大量に使う天ぷらは江戸から始まったもので、しかも高級品でしたから、日本人が食べ始めたのはごく最近です。

つまり、日本人が牛や豚、それに植物油を料理に使ったり、食べ始めたのは最近のことだから、かなり注意をしなければならないということです。多くの人は「ダイオキシン」やPCBというと怖がり、「サラダ油」というと健康に良いと思いますが、化学的にはそれほど大きく性質が異なるものではありません。

一度、工業製品になると、販売している会社がなんとてしても不利な情報を隠そうとしますが、こと食品のような場合にはもっとオープンな議論と報道が必要でしょう。

(平成27年4月11日)

(出典:武田邦彦(中部大学)ブログ




健康を知る004 日本食と油



日本人が油に注意しなければならないのは当然のように思います。表紙の写真に「普通の日本食」を示しましたが、ご飯と煮魚、それに煮物とおひたし、漬け物というと、普通の日本食ですが、そこには「油」がほとんどありません。

これに対して洋食というと、朝からベーコン、油で揚げたお菓子やバターを使いますし、中華料理でも基本は「油炒め」です。

日本食は世界でも珍しい食事で、多の国の料理は「油、辛み」でうまみを出すのですが、日本食は「うまみ成分・・・グルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸・・・昆布、鰹節、椎茸」で味を出す。

驚くべき日本食ですが、その日本食を長く食べてきた日本人が「油」に対して特別な消化系、代謝系を持っていても不思議ではありません。「日本食は油がないから、油は危険」というのも即断できませんし、「動物の脂を多く獲るヨーロッパ人と違う」というのも本当かも知れません。

いずれにしても、日本食という世界でほぼ唯一の味付けの食事をとってきた私たちに「油」を供給するときには産業界、学会などもかなり慎重になって欲しいと思います。

(平成27年4月19日)

(出典:武田邦彦(中部大学)ブログ




健康を知る005 コレステロールの誤報



(この記事を書いている時に、以下のニュースが出ました)

・・・・コレステロール:「気にせず食べて」動脈硬化学会が声明・・・

これに基づき、厚労省もコレステロールの制限を撤廃しました。実に無責任です。この記事は4月19日にかかれ、この発表のあった5月2日の前なので、改めて機会を作って新しい発表についてコメントしますが、この記事は科学的に書かれているのでそのまま掲載します。)

「コレステロールが体に悪い」という医学的にも栄養学的にも、生理学的にも間違った風評が日本の常識になったのは、次の理由です。

1) 医師が故障修理(治療)から、設計(健康管理)に進出した初期の間違い

2) マスコミが「衝撃的なことで注目を浴びよう」とした商業主義

3) 人種差別健康論。

コレステロールが人体に害になるという間違った情報は、まだ医療が「治療中心」の時に、「健康」ということをよく考えなかった医学者が「ウサギの実験」と「ヨーロッパの超肥満体の人のコレステロール」を測定して、言い出したことです。時期もかなり前で、まだ「予防医学」が進んでいなかったこともあります。

ウサギの実験はとても雑なものでしたし、肉食でコレステロールが350などというヨーロッパの人の話をそのまま200以下の日本人に適応するという馬鹿らしい状態でした。でも、当時「コレステロール」という名前自体が珍しく、なにかそれを知っているのが「偉いこと」だった時代でした。

そして、コレステロールが人体に必要なもので、間違っていたことに気がついたのですが、その中でNHKは、まず「善玉、悪玉」という造語を作り、次第にコレステロールのことを放送しないという方法で、間違いを訂正せずに責任を逃れようとしています。

表紙の図のように日本人では220ぐらいまでは問題がなく(基準値は間違って悪玉と呼ばれているものが140程度)、一日も早くコレステロールの誤解を解く報道や説明が求められます。

もっとも大きな問題は、日本人が普通の日本食を食べている場合、コレステロールというものを注意する必要があるのかということです。コレステロールは体に必要なものですから、体内で80%も合成されます。だから、「病気ではない人」なら食事からコレステロールを多くとるようになると(食事からはわずか20%)、体内合成を減らすので、それで十分調整できます。

次に病的な人、つまり体がコレステロールを調整する力を失った人の場合、病気ですからコレステロール調整力を回復させる方法が必要ですが、今のところ、十分な医学は進んでいません。そこで、「その人の正常なコレステロール値」が分かっている場合は、緊急避難として若干食事の制限なども有効とされています。

これから血圧などについても理解を深めていきたいと思いますが、コレステロールも万人に共通の「基準」があるわけではありません。その人の「正常コレステロール値」が分かっている場合に限り、治療が有効になるでしょう。コレステロールが低いとがんを発症しやすいことはよく知られていて、もしかすると「健康に注意してやせ気味」の人ががんを発症しやすいのも、中途半端な知識をテレビや医師から得て、ストレスがかかっていることも原因と考えられます。

(平成27年4月19日)

(出典:武田邦彦(中部大学)ブログ




健康を知る006 頭脳と利己主義がなければ


「健康を知る」も第6回になり、時には少し深い話もしてみたいと思います。

動物の世界を見ると、人間と大きく違うところがあります。それは「医療や栄養学が無くても健康で、自分の死期を知って逍遙として死に臨む」ということと、「集団に寄与できなくなると命を終わる」ということの二つです。また人間に飼育された動物は野生の動物と違って、独特の病気にかかります。「鳥インフルエンザ」がその例の一つで、野鳥は原則として発症しません。「家禽病」、つまり「人間に飼われること」が病気の元になるという病気が多いのです。

つまり、健康を害し、寿命が短くなるのは、

1) 知識があるから、

2) ストレスがあるから、

3) 利己主義だから、

4) 調理しすぎだから、

と考えられます。

最後の4)ですが、これが家禽病の原因かも知れません。また3)は動物界で共通のことで、「寿命を決める健康状態」とは「個別の動物の健康状態」ではなく、「集団に寄与しているか」がその前提になります。

哺乳動物では閉経後のメスやはぐれオスの寿命が極端に短いのは「集団で貢献できない個体は健康でも死ぬ」ということを示しています。幸い、人間の社会は複雑なので、いろいろなことで「社会貢献」ができます。女性の場合は主としてお世話が有効で、男性では社会の役に立つことと考えられています。

人間、特にヨーロッパ文化は「個人が良ければ良い」ということですが、これは浅薄な考えで、人間を含めた多くの哺乳動物はそんなに簡単な運命を持っているわけではなく、「個人より集団に貢献するほど長生き」というのが普遍的な原則のようです。

この際、「自分の健康」より「社会に貢献する」ことに重点を置く「健康法」を編み出すのが良いと思います。

(平成27年4月29日)

(出典:武田邦彦(中部大学)ブログ



武田邦彦先生のプロフィール

昭和18年(1943)6月3日、東京都生まれ。
昭和37年(1962)都立西高等学校卒業・昭和41年(1966)東京大学教養学部基礎科学科卒業。
同年(1966)旭化成工業(株)に入社、(1986)同社ウラン濃縮研究所長、平成5年(1993)より芝浦工業大学工学部教授を経て、平成14年(2002)より名古屋大学大学院教授,平成19年より中部大学教授。

工学博士、専攻は資源材料工学。

(現在のその他の役職)
名古屋市経営アドバイザー、富山市政策参与、名古屋大学高等研究院院友、芝浦工業大学名誉賛助員、旭化成社友、高分子学会フェロー、株式会社ラッド取締役

(前、元など)
内閣府原子力委員会専門委員、内閣府原子力安全委員会専門委員、文部科学省中央教育審議会専門委員、文部科学省科学技術審議会専門委員。

東京大学、京都大学、東北大学、横浜国立大学、早稲田大学、立教大学、愛知大学などの非常勤講師、
文部科学省中央教育審議会専門委員、工学アカデミー理事、芝浦工業大学評議員、学長事務代理、大学改革本部長代理、教務委員長、NEDO技術委員,日本工学教育協会常任理事、JABEE工学一般審査委員長、非営利法人「おもしろ科学たんけん工房」「テクノ未来塾」理事などを経験。 

専門は資源材料工学 

主な受賞:
日本工学教育協会工学教育賞(倫理)、日本原子力学会平和利用特賞、日本エネルギー学会賞、日本工学教育協会論文・論説賞(創成科目)、マテリアルライフ学会論文賞、資源素材学会発表論文賞, World Materials Day Awardなど。 

(出典:武田邦彦(中部大学)ブログ






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